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原発事故公判 なぜ?に誠実に答えて(東京新聞:社説) - 七転八起Shichitenhakki

2018/10/17 (Wed) 11:04:00


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018101702000161.html





 東京電力の元幹部が被告人席に立った。市民が強制起訴した福島第一原発事故の刑事裁判だ。大津波は予見できたか。なぜ事故を防げなかったのか。国民は真相を知りたい。誠実な答えがほしい。


 検察審査会による強制起訴での刑事裁判は、過去にJR西日本の福知山線脱線事故の例がある。歴代の三社長が起訴されたが、昨年、無罪が確定した。


 制限速度を大幅に超過し、脱線転覆させた運転士と違い、歴代社長にはそこまでの危険性の認識はないと裁判所が判断したからだ。


 では、福島の原発事故の場合はどうか。もし大津波の襲来を予見しつつ対応を怠り、全電源喪失の事態を招いたとしたら…。


 大津波に対しては防潮堤を高くするなど、さまざまな工事を伴う。経営トップらの決断で対策のゴーサインが出る。東電幹部の判断一つで原発事故に直結するといえる。そこがJR西日本のケースと大きく違う点だ。


 二〇〇八年まで遡(さかのぼ)ってみる。国の地震予測「長期評価」を基にした簡易計算では、津波の高さは七・七メートル以上と社内会議で報告された。その後、東電子会社の詳細な計算で最大一五・七メートル以上となることが判明した。


 この日の法廷では被告の武藤栄元副社長も「〇八年六月に社内会議で初めて説明を受けた」と認めている。武藤元副社長は原発の安全を担う責任者だった。だが、東電は対策に乗り出すのではなく、土木学会に試算手法が妥当かどうか検討を委ねている。


 「問題の先送り」なのか「慎重な検討」なのか。「時間稼ぎ」との元東電社員の証言もあった。


 武藤元副社長は「長期評価は信頼性がないと説明され、新しい知見が出たわけではないと思った」と法廷で反論している。


 実は津波対策の明暗を分ける報告会が東電内であった。沖合の防潮堤の建設費が数百億円に上ることが示されると、ある幹部は「(津波数値を)少しでも下げられないか」と尋ねたという。


 国際原子力機関(IAEA)は「日本の原発は安全との思い込みで、安全レベル向上に挑もうとしない傾向があった」との報告書を出している。


 大津波の予測段階で、東電は費用と労力を惜しまず、なぜ迅速な対応が取れなかったのか。IAEAの言う安全神話を信じたせいなのか。「レベル7」を招いた根本原因を突き止めたい。


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